百万本のバラ




 信じてくれますか。
 一人の若者が小さな家を売りバラを買いました。
 町中のバラを。ありったけのバラを。百万本のバラを。

「という内容の歌があるんだが」
「はあ」
「どう思う」
「どうって」
「ちなみにその若者はすげー貧乏な絵描きで、全財産をバラに変えてその女性に送ったんだけど、その女はどっかの金持ちのイタズラだと思いこんで終わるんだよ」
「……報われねー!」
「だろ。だろ?」
「まあ、百万本って本気で百万本だったら引くな。とりあえず」
「うん」
「で、なんでその話だ」
「や、なんとなく。なんでさー、この絵描き、ナマのバラ百万本だったんだろうな。絵描きならバラの絵百万枚描いてやればよかったのに」
「とりあえずそれ何年かかるんだよ」

「一生かけて描けばよかったのに」

 そういう男だったらオレは惚れるなあ。


 猿野がそんなことを言ったので、オレは一生かけたらこいつに100万回投げてやれるだろうかと、犬飼は思った。



2005/06/10   かなり気に入ってます。