「種」

踊るわたしの手を引いて
桃色の波紋の上へ導いて
そこで産み落とさせて

まるで奇跡みたいに
美しくもないのに愛しい
わたしの子どもたち



沈むべきは沈み
浮かぶべきを浮かべ
流れゆくを見送り
空へ向かうならこの愛を託け



かたわらのあなたに
指先からは伝わらずとも
いつか空から
いつか返る波から
いつか繁り咲く花から

奇跡みたいに
さして美しくもないのに愛しい
愛しいわたしを



いつか返る波から
ぽこぽこ産まれくる想いたちを。














静かに息を吐きなさい
その苛立ちをちらちらと沈め
澱む胸底を優しく冷やし
忘却のひとつこちら側で
誰かの声に耳を傾けなさい



澱む胸底
世界は、となりにあるから
















ひとひらのあなた
タイトルは「葬風」。
人に贈ったものなので、今しばらくは未公開で。












「踝」

ねえ
踝を撫でて
骨をなぞって
わたしのカタチを想って



わたしのカタチ
踝って萌ポイントですよね














愛はどこへ行くの
ここに居たのに
どこへ行くの

愛はどこへ行ってきたの
私から離れて帰ってきた
どこへ行ってきたの


増えもせず
減りもせず
なにも変わらず


愛はなぜ戻ってくるの
あたたかなまま
やわらかなまま
きよらかなまま
なにもしらないで



すべてがとうめいすぎて
なにもみえない



とうめいすぎて
わたしがどんなになっても、
愛は、そのまま、そこにあった。












「うるむそら」

とおく
手の届かぬそらに
やさしい潤いがある
うつくしきくもりの日

幼い心が
潰れていった


地上は
粘りつく


排気ガス
生ゴミ
嘔吐物
朝のため息

閉じ込められて
疼きあがく
ちいさな日々
くもりのうつくしさを知らない
つたない絶望

幼い命が
潰れていった



手の届かぬ空の
届けば知るはずのうつくしさを想う

潰れてしまう前に
空を飛べればよかったのに


いちめんの
やさしいくもり
うつくしき
みずみずしさよ



うるむそら
見知った街で、中学生が飛び降りたと聞いて。












「with」

全部 全部 連れて 行こう

悲しくても
傷付けたままでも

全部を連れて
ただ未来へ



全部を連れて
私は私を捨てずに生きよう。
と思った。