「Will」
たとえば明日
私は死ぬのだとしたら
あなたに手紙を書いたほうがいいのかな?
最後の瞬間まで変わらない
ありがとうを
愛を
伝えたほうがいいのかな?
悲しまないでください
苦しまないでください
気休めにしかならない
それでも言葉はあるといい?
それとも
ゆるやかに私を忘れてくれますように
祈りながら黙って逝くのがいいのかな
恨んで悔やんで
答えは出せずとも
私のいない明日に一人で立ち上がれるようにそして一人で歩いていけるように
信じて口を閉ざすべきかな
たとえば明日
いつ死んでしまうかわからないから
「到夏」
夏が来た 夜
家じゅうの窓が開いている
街の声
風になって駆けてゆく
抱かれた物語も
過ぎてゆく だろう、けれど
ここにいるよ
ひらひら
夜に泳ぐカーテン
真夜中の薄闇
埃に街灯
チカチカ
その向こうの星空を
私は観ている
ざあざあ
車の来て去る
途切れない音
30秒ごと信号のリズム
ブイブイ
その向こうの雲の水音を
私は聴いている
夏が来て 夜
家じゅう窓を開けている
拒まないでいるよ
閉じ籠らないでいるよ
歌う吐息はそっとひそめて
泳ぐ両手を差し延べながら
ここに いるよ
抱かれた物語/歌う吐息
夜と空を抱こうとしながら、ここに。
「朗らかに響いて響いて 」
恐れないでいることを
わたしはおぼえたよ
涙まじりに叫んだこの歌も
今歌えばただ朗らかに朗らかに
響いてまるで違う うた
願うでなく信じることを
わたしはおぼえたよ
足掻くでなく掴むことを
すがるでなく抱き締めることを
嘆くでなく愛することを
苦しんだ日々さえ認めることを
朗らかに響いて
あかい、うたたち。
「布切れ一枚」
布切れ一枚で生きていた
あなたを思い出す
質素な人だった
何も望んでいなかった
ただひとつ
あなたがあなたで居ることをだけ欲していた
美しかった
自分を捨てたかった
あの頃の私には
とても
とても
美しかった
布切れ一枚
原始人に憧れてでもいるような詩ですが、
決してそういうわけではなく。
「傍にも居られぬ季節ゆえ」
君を愛す
君を愛す
せめて夏
君を愛す
秋に哀れみをうけ
冬に抱かれたがり
春に言葉を欲しがり
だからせめて
夏にはただ
君を愛す
せめて夏には
ただ想うだけの季節が、
あってもいいだろう。
「パートナー」
わたしの存在が、人を幸せにする。
こんな奇跡、他にあるか。
こんな奇跡
苦しんで幸せを掴んだ人に贈った言葉。