「手放しの現実」

救いの言葉を
一言一句たがわず憶えていたとしても

こころが瀕死になって
何もかも閉じ込めてしまう
なんてことは


だれにでもある
かならずある
いつでもおこりうる



手放しの現実
真実は永遠のものだけれど、
生きていれば消耗品です。
だから繰り返し囁いて。












「道連れの命」

一人で立つこともできないなら
いっそ足を切り落とせ私

足なんかあるから
みんなもじぶんも
私を立ち上がらせようと思いつくんだ

どれだけの人の
肩を煩わせるつもり?


一人で歩けもしないなら
いっそ未来を切り捨てろ私



脊椎から潰れてしまえ。



道連れの命
「置いていけばいい」と私は言いました。
「馬鹿」とあなたは言いました。
















夢が終わる前に
自重。












「終末に青。」

今すぐ何かが襲ってくればいいと思った。

そうすればこのまま手をつないで逃げ出せるもの。


青い空が消えたら青い海へ
青い海が吠えたら青い森へ

青い青い愛だけをたよりに走っていこう。


消えてしまうまで走っていこう。



青い空が消えたら
どっか行きたいのうた












「いつもの背中」

足の爪がはがれても走り続ける
そんな激しさがあれば良いとも思うけれど
そんな一途さがあれば良いとも思うけれど

痛いものは痛い
痛いと思えば歩みは遅い

だから私は立ち止まり腰を下ろす


先を歩むあなたに声はかけず

気づいて と 目だけで追う


あなたがふと振り返って戻ってきてくれたら
つかの間の休息と
また歩くための包帯を請おう



いつもの背中
背中を見ながら、繰り返し学ぶ痛み。












「よるのあるくに」

もしもわたしが王様ならば
かならず夜の来る国をつくります

起きていていいのは
お医者さんと
消防士さんと
お月さまと
お星さま

こどももおとなも
そっと窓をしめて
おやすみなさいを言って

しずかなしずかな夜を
目が醒めたとたん忘れてしまう
きれいな夢を見て過ごすのです


そんな静かな静かな夜を


せめておやすみを言う人がいる夜を



夜が欲しい
明るい窓の外。
大きな音で通り過ぎる自動車。
膝を抱えて、夜が欲しい、と思った。












「秋雨のワルツ」

なんてね
秋雨のワルツ
置き去りのステップ
憂鬱の朝
憂鬱の午後

ずっとずっと好きだったのに

秋雨のワルツ
水の王冠とステップ
愉快な朝
愉快な午後


昔のことになっちゃった


大好きだったのに

なんてね



秋雨のワルツ
雨が大好きだった私。
雨が降って、ゆううつで、驚いた。
悲しかった。